駐在員のキャリアデザイン

駐在員の転職・キャリアを考えるヒントにして頂くブログ

忘れ去られる日系企業海外駐在員の働き方改革

こんにちは、Keyです。
以前は日系企業で海外駐在をしていましたが、駐在中に転職を行い、現在はコンサルティングファームに勤めています。

さて、政府の働き方改革の号令のもと、我々コンサルティングファームへの業務改革に関する案件の引き合いが非常に増えてきています。
日経を読んでいても、『Robotics Process Automation(RPA)による業務自動化』や『在宅などを含めたフレキシブルな働き方』『女性が出産後に戻りやすい人事再設計』など、関連するニュースが紙面を踊らない日はありません。

まぁ、他社がやっているから、自分達も何かしないわけにはいかないという目的と手段が入れ替わっているようなケースや、梃子をいれるべきはシステムの導入や制度再設計などの手段ではなく、管理職のチェンジマインドなど根っこが変わらなければ意味がないのでは?などと思うこともありますが、改革というのは出島から始まり徐々に本流でうねりを創るものです。右往左往しながらも、徐々に進んでいくのではないかと個人的には思っています。

一方で、私があまり世間で論点になっていないなと感じるのは、『海外駐在員の働き方改革は忘れさられ、進んでないのではないか』という点です。むしろ国内の働き方改革による残業時間の圧縮等で、労働環境は悪化さえしているのではと考えています。

私が思うに、海外駐在員の働き方改革が放置される、あるいは悪化する原因は主に3つあるのではないかと考えています。

一つは、海外駐在員の場合、みなし残業制度が適用されているがために、国内の仕事を押し付けられがちであるからです。
これは国内本社もみなし残業制度をいれていれば恐らく問題がないのですが、海外はみなしで、国内本社は通常の基本労働時間+残業代のケースが多い。
これにより何がおこるかというと、国内本社は働き方改革の錦の御旗のもと、残業代をゼロに押さえなければならなくなり、結果その分のワークロードが海外側へ押し付けられる構造を生みます。
海外側はいくら残業しても裁量労働制なので、オーバーヘッドが増えません。
国内本社で、システムによる自動化などの改善が同時に進んでいればそうはなりませんが、往々にしてとりあえず残業削減から始めると、こういった事態が起こりえます。

実際、先日ひさしぶりに、前職の日系企業で現在駐在中の元同僚と話をする機会がありました。
数年前に私がいた時も、国内の残業規制で相当に働いていましたが、今は輪をかけて労働環境が悪化していると聞きました。
平日は深夜まで、土日もPC開きっぱなし、しかも日本より祝日が少なく、有休はとれないとのことで、私が勤めるコンサルよりきつい労働環境のようでした。

二つ目の理由は、労働組合の管掌範囲から海外子会社が外れているからです。(これは会社によると思いますが)私の前職の会社では、なぜか海外子会社は労組の管掌範囲から外れていました。なので、どれだけブラックな環境であったとしても、組合経由で本社と戦うことができない構図を生んでいました。
たまに労組の人がねぎらい?に来てくれ、色々吹き込むのですが、全く耳にいれてもらえなかった記憶があります。

三つ目の理由は、海外勤務は任期がついていることが多く、中長期的な施策を検討しにくいからです。
管理職を含め、任期は1年~5年くらいのケースが多いでしょうから、管理職としては『自分のときに面倒くさいことをしたくない』スタッフとしては『2-3年だったら我慢できる』という風潮になりやすい。
また、海外子会社では様々な国籍、契約体系、報酬で勤務している人がいるため、国内で似たような勤務体系者ばかりのところよりも複雑で、手を打ちにくいということもあるでしょう。

以上、海外子会社で働き方が進まない、進めない理由を三つにまとめましたが、働き方改革を『余暇時間創出による生産性向上』と設定するのであれば、海外駐在員のようにコストが大きく、かつ創出するインパクトが大きい人達・部署でこそ働き方改革を実施すべきではないかと思っています。
海外駐在員は国内からのお偉いさんの出張対応や、国内向けの翻訳作業(英語でやってくれよ問題)等のしょうもない雑務で忙殺されるケースが多いはずですから。